先日、経営指導員を対象とした研修を受講する機会がありました。
テーマは、事業計画作成支援と小規模事業者持続化補助金の申請支援です。
講師は、現役の中小企業診断士の先生でした。
私は現在、商工会議所で地域企業の支援に携わりながら、中小企業診断士の資格取得を目指して勉強を続けています。
そのため今回の研修では、補助金制度の知識だけではなく、「中小企業診断士は実際にどのような支援をしているのか」を学びたいという思いで参加しました。
研修を受けて感じたのは、診断士の役割は「答えを教えること」ではなく、「事業者が自ら答えを見つけられるよう支援すること」だということです。
この考え方は、その後参加した創業塾でも実際に目にすることができました。
今回は、研修と創業塾で学んだことを通して、私が考えた「中小企業診断士の本当の役割」について書いてみたいと思います。
なぜこの研修を受講したのか
私がこの研修を受講した理由は、単純に補助金制度を学びたかったからではありません。
一番の目的は、「中小企業診断士が実際の現場でどのように事業者を支援しているのか、自分の目で見てみたい」と思ったからです。
私は中小企業診断士の勉強を始めた頃、資格に合格すること自体が大きな目標になっていました。
しかし、商工会議所へ入所してからは、「資格を取得した先で、どのような支援ができるのか」を考える機会が増えています。
以前、資格取得が目的になっていた頃の考え方については、こちらの記事でも書きました。
資格取得が目的になっていた|5年間の診断士学習で考えるようになったこと
今回の研修は、「支援の現場」を知るための貴重な機会になると思い、参加しました。
研修で感じたこと①|診断士の知識は実務でそのまま使われていた
研修で最初に感じたのは、診断士試験で学んできた内容が、そのまま実務の中で使われていたことです。
商工会議所で開催された勉強会でも、試験で学んだ知識が実務と結び付いていることを実感しました。詳しくはこちらの記事で紹介しています。
中小企業診断士の勉強は実務で役立つ?商工会議所の勉強会で実感したこと
例えば、事業計画を作成する際には、
- 自社の強みの整理
- 市場や顧客ニーズの分析
- 競合との差別化
- 売上向上につながる具体策
- 数値計画の作成
といった視点が重視されていました。
どれも中小企業診断士試験で学ぶ内容ばかりです。
以前の私は、「これは試験のための知識なのではないか」と思っていたこともありました。
しかし実際には、事業者を支援するための考え方や道具として、現場で活用されていました。
以前参加した商工会議所の勉強会でも、「試験勉強が実務につながっている」と感じましたが、今回の研修では、その理解がさらに深まったように思います。
研修で感じたこと②|私は「正解を教える仕事」だと思っていた
今回の研修で、私の中で一番印象が変わったのは、中小企業診断士の役割でした。
以前の私は、中小企業診断士とは「経営の正解を示す専門家」のようなイメージを持っていました。
経営者から相談を受けたら、
- 何を改善すべきか
- どの補助金を活用すべきか
- どのような経営戦略を取るべきか
を答える仕事だと思っていたのです。
しかし、研修で見えてきた姿は少し違いました。
診断士が大切にしていたのは、
- 経営者の話を丁寧に聞くこと
- 強みや課題を整理すること
- 考えを言語化すること
- 実行できる計画へ落とし込むこと
でした。
つまり、答えを一方的に提示するのではなく、経営者自身が納得して行動できるよう支援していたのです。
私はこの時点で、「診断士の仕事」に対するイメージが大きく変わり始めました。
創業塾で見た、「本当の支援」とは何か
その考えをさらに強くした出来事がありました。
研修の後に参加した、起業を目指す方向けの創業塾です。
講師は、同じく現役の中小企業診断士の先生でした。
講義の中で、受講者が自分の事業について発表する時間がありました。
発表する内容は、「自分の事業にはどのような価値があるのか」、そして「その価値を支える根拠を3つ挙げる」というものでした。
ある受講者は、自身の事業の価値については説明できていましたが、その根拠をうまく言葉にできませんでした。
困った受講者は、講師へ「どう表現すればいいでしょうか」と助けを求めました。
私は、その場で講師が答えを示すのだと思っていました。
しかし、返ってきた言葉は違いました。
「それは自分で考えてみましょう。」
その後、講師はすぐに答えを教えるのではなく、質問やヒントを投げかけながら、受講者自身が考えを整理できるよう支援していました。
私はそのやり取りを見て、「これが中小企業診断士の支援なのかもしれない」と強く感じました。
「答えを与える」のではなく、「答えを導けるよう支援する」
創業塾でのやり取りを見て、私は一つのことに気づきました。
それは、事業の答えは、事業者自身が導き出さなければ意味がないということです。
もし講師がその場で答えを教えてしまえば、発表はスムーズに進んだかもしれません。
しかし、それでは受講者自身が「なぜ自分の事業に価値があるのか」を深く考える機会は失われてしまいます。
だからこそ講師は、すぐに答えを示すのではなく、質問やヒントを通して、自ら答えにたどり着けるよう支援していたのだと思います。
私は、この姿勢こそが中小企業診断士の本質なのではないかと感じました。
診断士は、経営者に代わって経営をする人ではありません。
経営者が自ら考え、納得して行動できるよう伴走する支援者なのだと、今回の研修と創業塾を通して実感しました。
事業計画書を書く目的も、同じ考え方だった
この気づきは、以前私が考えた「事業計画書を書く目的」ともつながりました。
以前の私は、事業計画書は補助金の審査を通過するための書類だと思っていました。
しかし、商工会議所で働き、研修を受ける中で、その考え方は変わりました。
事業計画書を書く本当の目的は、自分の頭の中にある考えを整理し、言葉にすることです。
事業計画書は審査を通すためだけではなく、自分の考えを整理するためのものだと感じたことは、こちらの記事でも詳しく書いています。
書くことで考えは整理される|ブログと事業計画書に共通する「伝える力」
そして、文章として整理することで、
- 自社の強み
- 現在の課題
- 今後取り組む施策
- 目指す姿
が明確になります。
その計画に沿って事業を進めることで、計画と実態との差異を確認し、必要に応じて修正を加えていくことができます。
つまり、事業計画書は審査員のためだけに書くものではなく、経営者自身が経営を考えるための道具でもあるのです。
今回見た診断士の支援も、経営者の考えを整理し、言葉にする手助けをするものでした。
私は、この二つは本質的に同じ考え方なのだと思いました。
二次試験で求められる力は、実務にもつながっている
今回の研修では、もう一つ印象に残ったことがあります。
それは、補助金申請支援の流れが、中小企業診断士二次試験の考え方と非常によく似ていたことです。
二次試験では、与件文から企業の状況を読み取り、
- 強みを把握する
- 課題を整理する
- 助言を考える
- 期待される効果を示す
という流れで解答を組み立てます。
一方、実務では、経営者との対話を通して現状を把握し、同じように強みや課題を整理し、今後の方向性を一緒に考えていきます。
違うのは、相手が文章ではなく、実際に事業を営んでいる経営者であることです。
だからこそ、二次試験は単なる試験対策ではなく、経営者支援の思考プロセスを学ぶ機会でもあるのだと感じました。
私が目指したい支援者像
今回の研修と創業塾を通して、私が目指したい姿も少しずつ明確になってきました。
以前は、「中小企業診断士になりたい」という思いが強く、資格を取得すること自体が目標になっていました。
もちろん、今でも資格取得は大きな目標です。
しかし、その先でどのような支援ができるのかを考えることのほうが、もっと大切なのではないかと思うようになりました。
私が目指したいのは、「正解を知っている人」ではありません。
事業者の話を丁寧に聞き、一緒に考えを整理し、自ら納得して前へ進めるよう支援できる人です。
商工会議所の職員と中小企業診断士では、立場や役割が異なる部分もあります。
それでも、「地域の事業者を支えたい」という思いは共通しているのではないかと感じています。
だからこそ、今の仕事で経験を積みながら、中小企業診断士として必要な力も少しずつ身につけていきたいと思います。
まとめ|支援とは、「答えを教えること」ではなかった
今回の研修と創業塾を通して、私の中で中小企業診断士のイメージは大きく変わりました。
以前は、「経営の正解を示す専門家」だと思っていました。
しかし実際には、
- 経営者の話を聞く
- 考えを整理する
- 強みや課題を明確にする
- 自ら答えを導き出せるよう支援する
という役割を担っていることを知りました。
資格試験で学ぶ知識はもちろん大切です。
しかし、それ以上に重要なのは、その知識を相手のためにどのように活かすかという姿勢なのだと思います。
私自身、まだ経験も知識も十分ではありません。
それでも、商工会議所での仕事や研修、そして資格の勉強を通じて、「支援とは何か」を少しずつ学んでいきたいと思います。
いつか中小企業診断士として活動する日が来たとき、「答えを教える人」ではなく、「相手が自ら前へ進めるよう支援できる人」でありたいと思っています。
こうした経験も、これまで積み重ねてきた学習や仕事の延長線上にあると感じています。その考えについては、こちらの記事でもまとめています。
小さな積み重ねでしか、大きな目標には届かないと思った話

