先日、商工会議所の経営指導員向けに実施された「経営課題解決に導くヒアリング力向上研修」を受講しました。
今回の研修テーマは、事業者との対話を通じて本質的な経営課題を見つけ出し、解決につなげるためのヒアリングについてです。
私はこれまで、商工会議所での業務や中小企業診断士の勉強を通じて、「相談対応で本当に大切なことは何だろう」と考える機会が増えていました。
今回の研修を受けて、その答えが少し見えた気がします。
研修名には「ヒアリング力」とありますが、私が最も印象に残ったのは、質問のテクニックではありませんでした。
本当に重要なのは、相談者が抱える問題を整理し、本当に取り組むべき課題を一緒に見つけること。
今回は、その研修を通して学んだことと、中小企業診断士という仕事について改めて感じたことを書いていきます。
一番印象に残ったのは、「問題」と「課題」は違うという考え方
今回の研修で最も印象に残ったのは、「問題」と「課題」を明確に区別して考えるという内容でした。
研修では、次のように整理されていました。
- 問題:現在起きている現象
- 原因:問題を引き起こしている要因
- 理想:本来目指したい状態
- 課題:理想に近づくために取り組むべきこと
- 解決策:課題を実行するための具体的な方法
これまでは、事業者から相談を受けた内容そのものが「課題」だと思っていました。
しかし実際には、相談者が最初に話される内容は、多くの場合「問題」にすぎません。
その問題がなぜ起きているのかを整理し、本当に取り組むべきことを明確にする。
そこに、支援者としての役割があるのだと学びました。
「売上が下がった」は課題ではなかった
研修では、「問題をそのまま課題として捉えてはいけない」という話がありました。
例えば、事業者から「売上が下がっています」と相談を受けたとします。
一見すると、「売上を上げること」が課題のように思えます。
しかし、これはまだ課題ではなく、あくまで問題です。
そこからさらに、原因を整理する必要があります。
- 来店客数が減っているのか
- 客単価が下がっているのか
- リピート率が低下しているのか
- 競合店の影響なのか
- 価格設定に課題があるのか
原因が変われば、取り組むべき課題も当然変わります。
もし原因を整理しないまま、「広告を出しましょう」「SNSを始めましょう」と提案しても、本当の課題が別にあれば期待した成果は得られません。
私はこの話を聞きながら、「支援とは、すぐに答えを出すことではないのだ」と改めて感じました。
問題の背景を整理し、本当に解決すべき課題を一緒に見つけること。
それこそが、支援者に求められる役割なのだと思いました。
創業塾での出来事と、今回の研修がつながった
今回の研修を受けながら、数日前に参加した創業塾での出来事を思い出しました。
創業塾では、受講者一人ひとりが、自分の事業の価値と、その根拠となる理由を発表する時間がありました。
ある受講者の方が、価値の根拠をうまく言葉にできず、講師である中小企業診断士の先生に助けを求める場面がありました。
私は、その場面で先生がどのように対応されるのか興味を持って見ていました。
すると先生は、すぐに答えを教えるのではなく、「それは自分で考えてみてください」と伝えられました。
もちろん、そのまま突き放したわけではありません。
考えるためのヒントを示し、少しずつ方向性を整理しながら、最後は受講者自身が答えを言葉にできるよう支援されていました。
その時は「自分で考えることが大切だからだろう」と感じていましたが、今回の研修を受けて、その意味がより明確になりました。
事業を実際に行うのは、支援者ではなく事業者自身です。
だからこそ、本当に価値のある事業計画は、支援者が作るものではなく、事業者自身が考え、納得した上で作り上げるものでなければならないのだと思います。
支援者の役割は答えを与えることではなく、考えを整理し、自ら答えを導き出せるよう伴走すること。
今回の研修で学んだ内容と、創業塾で見た光景は、私の中で一本の線としてつながりました。
実際に経営指導員向け研修を受講した際にも、「答えを教える」のではなく、事業者と一緒に考えることの重要性を感じました。こちらの記事でも、その時の学びをまとめています。
経営指導員向け研修で実感した|中小企業診断士の仕事は「答えを出すこと」ではなかった
商工会議所職員にも求められる役割は同じだと思った
創業塾での出来事と今回の研修を通じて、私はもう一つ感じたことがあります。
それは、この考え方は中小企業診断士だけではなく、商工会議所職員にも当てはまるということです。
商工会議所には、日々さまざまな相談が寄せられます。
- 補助金を活用したい
- 創業を考えている
- 資金繰りについて相談したい
- 販路を広げたい
相談内容はさまざまですが、相談者が最初から自社の課題を整理できているとは限りません。
むしろ、「何に困っているのかは分かるけれど、何を改善すればよいのか分からない」というケースの方が多いのではないかと思います。
だからこそ、職員に求められるのは、すぐに答えを提示することではなく、対話を通じて状況を整理し、一緒に課題を明確にしていく姿勢なのだと感じました。
もちろん、制度の説明や補助金の案内など、正確な情報を提供することも重要です。
しかし、それだけでは十分ではありません。
事業者が自ら考え、納得し、行動につなげられるよう支援することが、本来の役割なのだと思います。
中小企業診断士の勉強は、「考え方」を学ぶことでもあった
今回の研修を受けながら、これまで続けてきた中小企業診断士の勉強にも、新たな意味を感じました。
診断士試験では、企業の現状を分析し、課題を整理し、助言を行う問題が数多く出題されます。
以前の私は、それを「試験で点数を取るための知識」と捉えていた時期がありました。
しかし実務では、その思考プロセスがそのまま活かされていました。
違うのは、試験では情報が整理された状態で与えられますが、現実では情報が整理されていないことです。
だからこそ必要になるのが、ヒアリングです。
相手の話を丁寧に聞き、状況を整理し、本質的な課題を見つける。
その土台があるからこそ、適切な提案や支援につながります。
今回の研修を通じて、試験で学んできた内容は知識を覚えることではなく、「経営者と一緒に考えるための思考法」を身につけることだったのだと実感しました。
試験勉強で学んだ内容が、実際の現場でどのように活かされているのかについては、こちらの記事でも詳しく書いています。
中小企業診断士の勉強は実務で役立つ?商工会議所の勉強会で実感したこと
「質問力」よりも、その先の課題設定力が重要だった
研修名は「ヒアリング力向上研修」でしたが、私が学んだのは質問のテクニックではありませんでした。
もちろん、適切な質問をすることは重要です。
しかし、それ以上に大切なのは、質問を通じて得た情報を整理し、問題の背景を考え、本当に取り組むべき課題を設定することです。
質問は、あくまでもそのための手段に過ぎません。
だからこそ、タイトルにある「質問力より課題設定力だった」という言葉が、自分の中ではとても腑に落ちました。
そして、その課題設定力を支えているのが、相手に寄り添う姿勢であり、信頼関係であり、ヒアリングなのだと思います。
知識だけでも、質問技術だけでも十分ではありません。
事業者の思いを引き出し、一緒に整理し、納得できる形にしていく。
その積み重ねこそが、経営支援の本質なのではないかと感じました。
まとめ|支援とは、答えを渡すことではなく、一緒に考えることだった
今回の研修を受けて、経営支援に対する考え方が以前より明確になりました。
支援者の役割は、正解を教えることではありません。
相談者の話に耳を傾け、問題を整理し、本当に取り組むべき課題を一緒に見つけていくことです。
創業塾で中小企業診断士の先生が、すぐに答えを教えず、受講者自身が考えられるよう支援されていた姿は、そのことを象徴しているように思いました。
そして、それは商工会議所職員にも求められる姿勢なのだと感じています。
私はまだ経験も浅く、知識も十分とは言えません。
それでも、今回の研修を通じて目指したい支援者像が、以前より少し具体的になりました。
これからも資格取得だけを目標にするのではなく、学んだ知識を現場でどう活かすかを考えながら、一歩ずつ経験を積み重ねていきたいと思います。
そして将来は、「答えを教えてくれる人」ではなく、「一緒に考えてくれる人」と思ってもらえるような経営支援ができるよう、学び続けていきたいと思います。
私自身、以前は資格取得そのものが目的になっていた時期がありました。考え方が変わったきっかけについては、こちらの記事で詳しくまとめています。
資格取得が目的になっていた|5年間の診断士学習で考えるようになったこと

